被災地からのレポート
グロッセ世津子さんが転送して下さったレポートです。 昨日の夜からガソリンスタンドに並び、20リットルの限定給油が出来たのが13時間後 の今日のお昼でした。さすがに少し腰痛気味です。 大手の食料品のお店には、朝から1000人近くの行列、コンビニの食料もあっという間に 品切れになっている状態です。 今日は、連絡のつかなくなっている妻の実家の家族の安否をなんとか確認したいと他の 患者さんのお家に水を運んでから、実家のある石巻に向かいました。 (20リットルのガソリンで、往復120キロのちょっと緊張感がありました) 町は、泥と海水で異臭が漂い、あちこちの道路はでこぼこでしたがそれでも、テレビの パニック風の編集とは全く違う場の空気を感じとることも出来ました。
さて、初日からいろいろありますが、ここまで印象に残った体験を少しレポ-トします。 「介護の場」 今回の地震が起きてすぐに問題になったのが人工呼吸器をつけていらっしゃる患者さんです。 電力を賄うことが出来なくなると、時間との勝負になります。 ガソリンの自家発電機も2時間程度のものしかないために病院に搬送することになりまし たが、救急車ももちろん混み合っており自家発電が切れる時刻に迎えに行けるかもわか らないとのこと。 そこで今回は、次々と来る余震で今にも崩れてきそうな古い家屋に踏み込んで病院に 行くのを嫌がる患者さんを説得して何とか担ぎ出し、呼吸補助を家族の方にお願いして なんとか無事に自家用車で病院への移動を終え、ほっと胸を撫で下ろした次第です。
こんなときは医療機関に頼ることが本当に難しいので、繋がりを持った者同士で声を掛 け合い、協力をし合うことが命を救うことになります。 足をしっかり運んで、患者さんの顔をみて身体に触れ、「もう、大丈夫ですよ!」と背中 をさすりながら力強く車いすを運んでいくことも、心の不安を和らげるためにとても大切 です。患者さんの安心されたそのお顔。本当に嬉しいものです。 私たちも力を頂くのですね。 普段から介護の場がしっかりと育まれていることが非常時いかに力を発揮するか、改め て思い知らされた次第です。 「発電機付きの携帯ラジオは本当に役に立ちます」 その他にも、地震速報や、様々な現況を伝えてくれる懐中電灯の付いた携帯のAMラ ジオ(電池ではなく自家発電式です)は大変、役に立つということも分かりました。 当たり前のことのようですが、現状では、携帯やインタ-ネット等は、少し電気などの 復旧した後の方が役に立つということだと思います。 「個人商店」 大手のコンビニやス-パ-よりも力を発揮しているのが、個人商店です。 普段は、近所の人しか訪れないような、影に隠れぎみな存在の小さなお店が機動力を 発揮しています。 「日本人の凄さ」 さらにちょっと感動したことがいくつかありました。 その一つは信号機もない中で、車が驚くほどスム-ズにしかも譲り合いながら流れていること。 二つ目は、燃料や食料の供給に並ぶ長蛇の列を決して壊さず何時間も並び、声を掛け 合っている光景。 ガソリンスタンドで並んでいても実に整然としていることにちょっとした感動を覚えます。 「横糸から縦糸が・・・」 被害の大きかった石巻の田舎に住む妻の家族も、津波の中で頭まで水が来て命からが らの思いをしたり、家屋や車を流されたりしながらも、お互いが助け合って元気でいてく れました。 ついでにまだ家族との連絡が取れない息子の友達を家に受け入れて、一緒にペット ボトルにお湯を入れたコタツを囲み、私も皆も不思議なくらい明るく活き活きとした気持ち で、ろうそくの光を囲んでカレ-を食べました。
何気ない光景ですが、その場のあまりの温かさに日本人の横糸を創る素晴らしい力を 感じずにはいられませんでした。 しかもこの横糸、与贈といっていいのか分かりませんが、互いが与え合う形を取っている 為か、そこに、不思議な力強ささえ感じます。 今回に至っては、何か横糸が結びつきが強まっていくところから、あるときス-ッっと縦 糸が生まれてくるような、そんな人々の姿を初めて見たような気がした次第です。 共存在の深化が今、目の前で、とても穏やかにごく自然に、しかも力強く起こりはじめて いる・・・!と感じた次第です。 何か、とても生命的なといいますか、さなぎがふっと皮を脱ぎ始めるような、そのふっと 成虫に変わる瞬間を見せられたようで大変感銘を受けた次第です。
清水先生が、地獄と浄土ということをメ-ルに書いておられましたが、私はひょっと したら浄土にいるのかもしれません。
今は「生きている」というところを共有する喜びの方が大きいのだと思いますが、これから が「生きていく」という重要なところにさしかかってきますね。 明日からも与え贈る思想でしっかりと動きます。
以上、今日の報告です。 本多直人 ▲ ページトップへ |